世に雑草というけれど
これを除かなければならないのは、たぶん人間の都合でしかない。
庭の雑草は、作物の邪魔になるわけではない。
草によって損なうような、景観を期待するほどの庭でもない。
なのにこれを除くのは
放っておけば伸びに伸びて、抜くのが大変になるからだ。
こいつらも生命を張っている。
文字通り、根っこでもって、その生命を大地に張っている。
だから、ちょっとばかり申し訳ないと思うけれど
根が伸びて、抜けなくなる前に抜いてしまう。
ここ、と定めたところから
なるべく根を残さぬように、米粒を拾うようにして、抜いていく。
まずは背丈のあるものを抜いて
次にその下草を抜く。
周りの土も一緒に採れてしまうから
採った草ごとふるいにかけて、土を落とし、草だけにする。
草が地面を覆っていた方が土埃も立たないし、幾らかは涼しいだろうに。
そう思うのだけれど、この地面がまた草で覆われるのは
たったの1か月も経たないうちなのだから。
昔遊んだスノー・ボードに抜いた草と道具を積んで
陣取りをするように、じわじわと境目線を広げていく。
なるべくなら後ろは振り向かない方がいい。
大海原に、小舟でもって挑んでいるような気分になってしまう。
全部を毟り終えた後の「冷たいビール」は格別で
夕方の、涼しい風に当りながら、裸になった庭を眺めて悦に入る。
果てのない作業でも、ささやかな時間の為に、がんばれるものである。